この事例の依頼主
50代 男性
相談前の状況
会社員。会社の経費として計上できない支出(付き合いの飲食代や慶弔費など)を負担するため,銀行のカードローンを利用しはじめました。残業代や手当が減って返済が厳しくなったときや,転職で一時的に収入が減ったとき,クレジットカードでキャッシングしたり消費者金融で借金をするようになり,借金が膨らみました。なんとか返済を続けていましたが,奥さんが体調を崩してパート収入が減ったことで,返済が滞り始めました。債権者から訴訟を提起され,債務整理を決意しました。6社に対する借金約600万円。
解決への流れ
奥さんの収入が減った分,弁済に充てる資金の確保に不安があり,個人再生は難しいと考えられました。自腹を切って接待費に充てた点が免責不許可事由に該当するかが問題になりましたが,時期の点からおそらく問題にならないと判断され,破産を選択しました。退職金が見込まれたため,配当のため管財事件になりました。破産手続開始後,管財人が就きましたが,約1年で手続は終結し,免責許可決定を得ました。
病気休業や,リストラ・倒産・転職による収入の一時的中断が負債の増加に繋がるケースは債務整理を開始する典型例です。会社経費の立て替えによる借金の増大は,ときと場合によっては免責不許可事由に該当します,弁護士とよく相談するべきです。破産に対しては,いまだに多くの誤解がありますので,ここで触れておきます① そもそも,破産は不道徳で許されない?破産はモラルハザードを招く許されない行為だと考える風潮は,確かに今でもあるようですが,破産は,裁判所が,債務者に再生の機会を確するための制度であることが,現行破産法で宣言されました(破産法1条)。古い考えにとらわれるのは誤りです。② 戸籍謄本に記載されるのか戸籍謄本にも住民票謄本にも破産者であると記載されることはありません。③ 選挙権がなくなるのかなくなりません。④ 債務者が破産して債務を返済しなくて良くなった分を,その家族が返済義務を負うのか負いません。但し,家族が保証している場合は別です。保証を依頼されたときは,このことをよく考えましょう。⑤ アパートや賃貸マンションを追い出されるのか賃借人が破産したからといって,賃貸人は賃貸借契約を解約できません。⑥ 破産した事実を他人に知られる可能性はあるのか官報に公告されるので,その限りで知られる可能性はあります。⑦ 就職や結婚に影響するか,子どもの就職や結婚に影響するか法的には影響しません。しかし,事実上,影響することがあるかも知れません。⑧ 自動車は手放さなければならないのか場合によります。微妙な場合があるので相談して下さい。⑨ 家財道具や身の回りの品は処分されるのか通常は処分の必要はありません。あまりにも高額な家具などは別です。