10634.jpg
「クマが来るから柿の木を切って」近所からの要望、無視して被害があったら賠償請求される?
2024年12月29日 09時14分
#クマ #クマ被害 #環境省

近年、国内各地でクマによる被害が増えています。環境省によると、2023年度のクマによる人身被害は219人で、うち死亡は6人と過去最多となりました。

北海道に広く分布するヒグマの推定個体数は中央値1万1700頭となり、過去30年間で2倍以上に増加しています。また、本州および四国の33都道府県に分布するツキノワグマも、推定個体数は増加傾向にあります。

クマが集落や市街地など人が住む地域に出没することも多く、その原因の一つが、民家の果樹や公園の樹木です。環境省の「クマ類出没対応マニュアル」では、クマの誘引物として「カキ、クリ、クワ」などの果樹を挙げた上で、伐採するか、電気柵で周囲を囲うといった対策をおこない、適切な管理をするよう求めています。

しかし、庭や敷地の管理が難しいケースもあります。弁護士ドットコムには、「クマが来るから、柿の木を切るよう、隣家の住人から要望がありましたが、大切な木なので、切りたくありません」という相談が寄せられました。

また、「別荘を所有しているが、クマが怖いので草刈りをしてほしいと言われています」という相談もあります。相談者によると、定期的に草刈りを実施しているといい、これ以上経費が増えることに消極的です。

いずれのケースも、果樹の伐採や敷地の草刈りをせずにクマが人に被害を及ぼした場合、持ち主や管理者に法的責任が生じることはあるのでしょうか。寺林智栄弁護士に聞きました。

近年、国内各地でクマによる被害が増えています。環境省によると、2023年度のクマによる人身被害は219人で、うち死亡は6人と過去最多となりました。

北海道に広く分布するヒグマの推定個体数は中央値1万1700頭となり、過去30年間で2倍以上に増加しています。また、本州および四国の33都道府県に分布するツキノワグマも、推定個体数は増加傾向にあります。

クマが集落や市街地など人が住む地域に出没することも多く、その原因の一つが、民家の果樹や公園の樹木です。環境省の「クマ類出没対応マニュアル」では、クマの誘引物として「カキ、クリ、クワ」などの果樹を挙げた上で、伐採するか、電気柵で周囲を囲うといった対策をおこない、適切な管理をするよう求めています。

しかし、庭や敷地の管理が難しいケースもあります。弁護士ドットコムには、「クマが来るから、柿の木を切るよう、隣家の住人から要望がありましたが、大切な木なので、切りたくありません」という相談が寄せられました。

また、「別荘を所有しているが、クマが怖いので草刈りをしてほしいと言われています」という相談もあります。相談者によると、定期的に草刈りを実施しているといい、これ以上経費が増えることに消極的です。

いずれのケースも、果樹の伐採や敷地の草刈りをせずにクマが人に被害を及ぼした場合、持ち主や管理者に法的責任が生じることはあるのでしょうか。寺林智栄弁護士に聞きました。

●要望に応じる義務はないが、責任が生じる場合も

——隣人からクマ対策として果樹を伐採したり、草刈りをしたりするよう要望があった場合、応じる義務はあるのでしょうか。

果樹の所有権は植えた人やその土地の持ち主に所有権がありますし、また管理している土地の雑草をどうするかはその土地の管理者が自由に判断できることではあります。

しかし、昨今のクマ被害の増加を考えると、近隣住民から要望があった場合には、これに対して対応すべき法的な義務が生じる可能性もあります。

クマの生息地に近い地域や直近数年の間にクマが目撃された地域などにおいては、クマの被害を発生させないようにするための注意義務が住民に一定程度課されると考えられます。

その一環として果樹の木を伐採する、あるいは実がなったらすぐに採取する、クマが隠れる場所をなくすために庭などの草刈りをするということが求められることになると思われます。

●地域住民が助け合いながら対策を

——もしも、果樹や草木を放置してクマが出没して、隣人に被害があった場合、賠償請求される可能性はあるのでしょうか。

結論からいうとその可能性はありうると考えられます。

例えば、近接した時期にクマの目撃情報が何度かあり、近隣の住民から再三に渡り草刈りや果樹の対策をとるよう求められていたにもかかわらず、これを放置していた場合には、先にあげた注意義務に違反すると評価されることもありうるということになります。

そのため、不法行為(民法709条)の賠償責任を負うこととなり、治療費等の損害をクマ被害に遭った隣人に支払う必要が生じうると考えられます。

——クマとどう共存していくか、個々人の力で解決することは難しいかもしれませんが、解決に向けて私たちにはどういうことが求められているのでしょうか。

最近は高齢化に伴い、果樹や雑草の管理が個人では行き届かないことも少なくないと思われます。

そういう場合には、町内会を中心とした地域住民全体で助け合いながら、草刈りや果樹の管理(伐採や実の採取)をするのが望ましいでしょう。伐採の費用を補助してくれる自治体もあります。

出没したら殺せばいいというのは非常に短絡的な考え方です。クマが人里に現れずに済む対策を人間側が取る必要があります。

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る